クリエイティブに携わる人々の思いを、広告というテーマに載せて描いた物語。
エレンという天才、エレンに及ばない才能ながらも苦闘する朝倉。二者の物語が交互に描かれ、そして交差していく。
何より心を打つのはクリエイターたちの創作にかける狂気ともいえる情熱。こうありたい、という作者の思いも入っているだろうが、トップレベルの情熱はこういうものではないかと感じた。
面白いのはデザインが話の中心にあるのに、作者の絵がカイジ並みに絵が下手であること。
ただ、読んでいて思うのは、何が人の心を打つかというと言葉でしかないということ。キレイな絵ではない。言葉が中心にあって、その効果を最大限に大きくできるように周辺環境を整えることが大事だと。
作品のラストで朝倉は「完璧だからダメなんです」とカメラマンに訴えかける。完璧なものには憧れるけど、我々は完璧ではないからこそ共感できないんだと。
自分の未熟な絵でもいいんだ、という作者の叫びにも聞こえたが、絵が未熟でも心が揺らされたのは確か。表現において本当に大切なものとは何か、を考えさせられた一作だった。